2009年01月12日

北森『聖書の読み方』

北森嘉蔵(1971)『聖書の読み方』講談社現代新書

著者は、聖書を読む際のさまざまな「コツ」を提示する。例えば、旧約と新約の関係は、お札の印刷模様とすかし模様の関係であることや、牧師や神学者による「ときあかし」を必要とする箇所があれば、そのような「ときあかし」抜きに聖書「そのもの」を読むだけがよい箇所もあること、などである。著者の神学のテーマは「神の苦難の愛」、「神の痛みの神学」である。それは、例えば、最後の晩餐の際にユダの裏切りを予告するキリストの言葉に表われている。キリストはユダを「わざわい」と断じる。「わざわい」とは「許されがたい存在であり、神の意志の外に脱落した存在であることを意味する」(p.144)。従って、キリストの十字架死は、神がそれらの外にいる存在をその愛の内に引き込もうとする時に必然的に伴う痛みの、歴史的具現化であるとされるのだ。キリスト教神学には疎いので、このいわゆる北森神学が、オーソドックスなものと比べて正確にどのような位置に立つものなのかはわからないが、神を一層人格に近づけ、神の全能性にも触れてしまいかねない「神の痛み」の概念は、ある程度ラディカルなものと捉えられるのかもしれない。
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