2009年02月05日

『キリスト教の本(上)(下)』

『キリスト教の本(上)(下) Books Esoterica 15, 16』(学習研究社、1996)

1-4c: グノーシス派(至高者との本質的同一の悟り(認識=グノーシス)・霊肉[善悪]二元論・救済的神話観『ナグ・ハマディ文書(1945年にエジプトで発掘)』『トマスによる福音書』)→ナハシュ派・ウァレンティノス派、マニ教(3c、イラン)
⇔イレナエウス(c130-c200)『異端反駁論』、テルトゥリアヌス(c160-c222)『キリストの肉について』「不合理なるがゆえに信ず」
2cM: マルキオン派(グノーシス派→愛の神・キリスト仮現論、ドケティズム)
156/7(172/3)-5/6c: モンタノス派(終末論・神憑り的聖霊)
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BC1cL-1cE: 『七十人訳聖書(ギリシア語訳)』(「律法」+「(旧約)外典」)→これ以外を「(旧約)偽典」
c90: 『聖書(ユダヤ教正典)』(「律法」+「預言者」+「諸書」)
2cL: 『聖書(ギリシア語原典)』(「旧約」+「新約」)
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313: ミラノの勅令【コンスタンティヌス帝】
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325: ニカイア公会議(ニカイア信条・キリスト両性論)
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381: コンスタンティノープル公会議(内在的三位一体論⇔経綸的三位一体論)→アウグスティヌス(354-430)『三位一体論』(精神、認識、愛)
アタナシウス(c296-373)派(キリストと神の同質homoousios)・アレクサンドロス(c250-c328)⇔アリウス(c250-c336)派(類質homoiousios)
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392: ローマ国教化【テオドシウス帝】
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397: カルタゴ公会議(『聖書(ギリシア語原典)+第二正典<旧約外典>』が正式に正典化)→これ以外を「新約外典(アポクリファ)」
405: ヒエロニムス(342-420)によるラテン語訳『ウルガタ』(→1546: トリエント公会議において標準聖書とされる)
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410: ペラギウス(c360-c420)論争(原罪を否定し自由意志、人間の努力の可能性を強調)⇔アウグスティヌス(原罪を前提として自由意志を確認→神の恩寵の絶対的不可欠⇒ルター(1483-1546)による厳格化、ヤンセン(1585-1638)による自由意志の否定→パスカル(1623-1662))
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411: カルタゴ公会議: 秘蹟の効果について(311: フェリクスによるカエキリアヌスの叙階秘蹟)⇒人効論(ドナトゥス[急進]派)vs.事効論(アウグスティヌス→カトリック教会の絶対的立場)
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4/5c: エウテュケス(キリスト単性論)
5cE: ドナティズム紛争(北アフリカの農民や都市下層民による非寛容の精神運動)
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431: エフェソス公会議(聖母マリアの処女懐胎と聖誕説)/キュリロス(?-444)⇔ネストリウス(c382-c451)(聖母マリアを「キリストの母」)
* ネストリウス派: 4cのコンスタンティノープルの総主教ネストリウスを教祖とする。東シリア(アッシリア)教会とも。ネストリウス派系の他に、単性論派系と東方典礼カトリック教会系がある。
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451: カルケドン公会議⇔ネストリウス派(→7c: ペルシアのアラボンによる大秦景教)、コプト派(エジプト、アレクサンドリアの総主教ディオスコロス)・ヤコブ派教会(シリア、エデッサの府主教ヤコブ・バラダイオス)・アルメニア教会(以上、キリストの神性を強調する単性論派)の異端確認
* エチオピア(アビシニア)教会: コプト派系単性論派教会。安息日や割礼などユダヤ教的伝統も残る。
* 東方典礼カトリック教会: マロン派(レバノン、元来は単性論派)、マラバール教会(インド、ネストリウス派の末裔)
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1215: 第4回ラテラノ公会議【教皇インノケンティウス3世】: 「化体説」の公認
ヴァルドー派(教会不服従主義の団体「リヨンの貧者」)・カタリ(アルビ)派(グノーシス的善悪二元論)の異端弾圧⇔アルビジョア十字軍(1181)
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* ハリトリス正教会(ギリシャ正教)=「神聖正統使徒伝承東方教会」
* イスタンブール(エキュメニカル総主教、総代)、アレクサンドリア、ダマスカス(旧アンティオキア)、エルサレム、モスクワ、ソフィア、ベオグラード、ブカレスト、トリビシの各総主教庁+アメリカ正教会、日本ハリトリス正教会などの独立系教会
* 聖職は、主教(総主教、府主教、大主教、主教)、司祭、輔祭。主教は独身の修道士、司祭・輔祭は妻帯者でも可。独身の司祭(修道司祭)は、掌院や典院などとも呼ばれる。
1573: ルター派の使節がコンスタンティノープルの総主教エレミアス2世に接触→正教の一部がカトリック化(ユニア教会)
⇔同総主教キュリロス・ルカリスによる護教のための反カトリック主義(1629年に信仰告白書)
⇔キエフの府主教ピョートル・モギラによるカトリック色の強い『正教信仰告白』(1640)
* エルサレムの総主教ドシオテウス→中間派
* アトス山の修道士ニコデモス・ハギオリトとコリントの府主教マカリオスの共著『フィロカリア』(1782)→信仰復活運動へ
* 静寂主義: グレゴリオス・パラマス(1296-1359)→V・ソロヴィヨフ(1853-1900)、N・ベルジャーエフ(1874-1948)などに影響
* ニーコン(1605-1681): 1652年、モスクワ総主教。教会改革に奮闘。
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1933: マルティン・ニーメラー(1892〜1984)が反ナチズム抵抗運動を組織
1934: カール・バルト(1886-1968)によって起草された「バルメン宣言」によりナチズムを糾弾

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* 「アグラファ(書かれていない)」: イエスの語録。マタイ・ルカ両福音書に流れ込む「Q(quelle)文書」など。

*「使徒教父文書」(正典に準ずる位置付け)
『クレメンスの手紙T』『クレメンスの手紙U』『イグナティオスの7つの手紙』(教会史上、初めて「キリスト教」の言葉を用いた)『バルナバの手紙』『ヘルマスの牧者』『ポリュカルポスの手紙』『ポリュカルポスの殉教』『十二使徒の教訓(ディダケー)』『パピアスの断片』『ディオグネトスへの手紙』

*「新約外典(アポクリファ)」
1. 外典福音書
a. ユダヤ人キリスト教徒の福音書: 『ナザレ人福音書』『ヘブライ人福音書』『エビオン人福音書』
b. グノーシス主義者の福音書: 『トマス福音書』『ピリポ福音書』『真理の福音』(以上、「ナグ・ハマディ文書」)『エジプト人福音書』
c. 正典を拡張した福音書: 『ヤコブ福音書』『ペテロ福音書』『ニコデモ福音書(ピラト行伝)』『トマスによるイエスの幼児物語』『アブガル王の物語』『外典ヨハネ福音書』『ピスティス・ソフィア』
2. 外典行伝: 『ペテロ行伝』『パウロ行伝』(マニ教徒に採用)『ヨハネ行伝』『トマス行伝』(以上の二、グノーシス主義的)『アンデレ行伝』
3. 外典書簡: 『パウロとコリント人との往復書簡』『ラオデキア人への手紙』『セネカとパウロの往復書簡』『偽テトスの手紙』(プリスキリアヌス派の禁欲主義)
4. 外典黙示録: 『パウロ黙示録』『ペテロ黙示録』(ダンテ『神曲』の一部モチーフ)『トマスの黙示録』(マニ教徒もしくはプリスキリアヌス派)『イザヤの殉教と昇天』『シュビラの託宣』『エルケサイの書』
5. その他
a. 詩歌: 『ソロモンの頌歌』『ナハシュ(蛇)派の詩篇』(グノーシス主義の一派)
b. 祈祷: 『使徒パウロの祈り』(グノーシス主義)
c. 教え: 『ペテロの宣教』

* パピルス断片: 「オクシリンコス・パピルス」「エジャトン・パピルス2」「カイロ・パピルス」「フェイユーム・パピルス」

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* 聖ヴァレンティヌス(?-270): ヴァレンタイン・デーのもとになった聖人。癲癇のときの守護者。中世のころより、友人と恋人の守護者。祝日は2月13日ないし14日。
* 聖カタリナ(3c): 車大工・粉屋のほか、大学哲学科の守護聖人とされる。ローマ皇帝の面前で50人の哲学者を論駁し、車裂きの刑に。祝日は11月25日。
* 聖ニコラウス(270-343): 適齢期の処女の守護聖人、航海における救難聖人、子供や学生の守護聖人。サンタクロースのモデル(オランダ語読み、父親が持参金を用意できなかった三人の娘に夜中に窓からこっそりとお金を投げ込んだ逸話から)。祝日は12月6日。
* 聖マキシミリアノ・コルベ(1894-1941): ポーランドの司祭。1930年には東洋宣教のため長崎を訪問。ナチによってアウシュビッツへ収容され、ガヨヴィニチェクというポーランドの軍曹の身代わりとなって、餓死監房へ。同時に入れられた他九名の臨終を見送ったのち、薬物注射にて殺害。教皇ヨハネ・パウロ二世は「愛の殉教者」として称賛。祝日は8月14日。

[マニアックなところでは、家政婦(聖ジダ)やスケーター(聖リドヴィナ)の守護聖人なども。人びとの尊崇の念が真摯なものでも、これだけ多いとやっぱりプロテスタント諸派はもちろんのこと、ユダヤ教やイスラム教に比べても格段にゆるい感じが(教会運営の巧みさか…)。また、古代異教の地母神信仰に一部ルーツを辿ることができる聖母マリア像にも例に洩れずさまざまな守護的役割が当てられている。]

* グノーシス主義を始めとする秘教的なマリア解釈、「聖なる王(男神)」と「聖なる女王(女神)」との「聖婚」、そしてその「子」としてのイエス・キリストというような解釈は、抑圧された女性原理(といっても、ここでも女性・母がうつろいやすい魂と肉の由来であるとして劣位に置かれている)の救済、および双方の原理の満ち足りた再統合がテーマになっている。
* 12世紀の神学者ペトルス・アベラルドゥス(アベラール)によれば、聖歌『Ave Maria(マリアに幸あれ)』のAveはイヴ(Eva)の倒語で、彼女がもたらした原罪をマリアが贖ったとするオカルティックな説を主張した。
* 東方正教会ではマリアはその意志と信仰のわざでイエスを受肉したとされるために、彼女を「人類全体の代表」「真理の体現者」「生命の源」と見なす。カトリックに比べて、古代地母神信仰により近い。プロテスタン諸派はマリア信仰を拒否。
* 1854年、時の教皇ピウス9世により、民間信仰を追認する「聖母無原罪のお宿り」の大勅書が出される。これによって、マリアはキリスト教の女神の資格を「公的に」得たことになる。19、20世紀、各地で「聖母出現」の奇跡が起こる(1830年のパリの見習い修道女カトリーヌ・ラブレーによる「奇跡のメダル」、1858年のベルナデット・スビルーによる「ルルドの泉」、など)。

I・ベッグ(林睦子訳)(1994)『黒い聖母崇拝の博物誌(1985)』三交社
上山安敏(1998)『魔女とキリスト教: ヨーロッパ学再考』講談社学術文庫
関一敏(1993)『聖母の出現: 近代フォーク・カトリシズム考』日本エディタースクール出版部
竹下節子(1994)『パリのマリア: ヨーロッパは奇跡を愛する』筑摩書房
posted by ta at 19:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 文献レヴュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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